近年、日本の各地でその生息域を広げ、家屋侵入や生態系への影響が問題視されている特定外来生物、アルゼンチンアリ。その駆除の難しさは、経験した者でなければ分からないかもしれません。これは、ある戸建て住宅でアルゼンチンアリの被害に遭い、その駆除に成功した(とされる)一家の事例です。Aさん宅で最初に異変が起きたのは、初夏の頃でした。キッチンカウンターに、小さくて茶色い蟻が数匹いるのに気づきました。最初はよくいる家蟻だろうと軽く考えていましたが、日を追うごとにその数は爆発的に増加。キッチンだけでなく、リビング、洗面所、さらには二階の寝室にまで蟻の行列が見られるようになりました。市販の殺虫スプレーやベイト剤を試しましたが、効果は一時的。まるでモグラ叩きのように、一箇所を駆除してもすぐに別の場所から湧いてくるのです。蟻の種類を調べてみると、どうやら近隣地域で問題になっているアルゼンチンアリの特徴と酷似していることが分かりました。アルゼンチンアリは巣が広範囲に分散し、女王蟻も多数存在するため、巣ごと根絶するのが非常に難しいとされています。途方に暮れたAさんは、地域の役所に相談。そこで紹介された害虫駆除の専門業者に調査と駆除を依頼することにしました。業者の調査により、やはりアルゼンチンアリであることが確定。被害は家の中だけでなく、庭の植木鉢の下や敷石の隙間、隣家との境界付近にまで及んでいることが判明しました。駆除作業は複数回にわたって行われました。まず、家の中と外周に、アルゼンチンアリに効果の高い特殊なベイト剤を多数設置。さらに、巣がありそうな場所や侵入経路となりそうな隙間に、残効性のある薬剤を散布・注入しました。業者からは、駆除効果を高めるために、庭の不要な植木鉢や瓦礫を撤去し、風通しを良くすること、そして家の中の清掃と食品管理を徹底するよう指導がありました。Aさん一家も協力し、業者による駆除作業と並行して、家周りの環境整備に取り組みました。数ヶ月にわたる根気強い対策の結果、あれほど猛威を振るっていたアルゼンチンアリの姿は、徐々に減っていき、最終的にはほとんど見られなくなりました。完全に根絶できたかは断言できないものの、ひとまず平穏を取り戻すことができたのです。この事例は、アルゼンチンアリ駆除には専門的な知識と技術、そして根気強い取り組みが必要不可欠であることを示しています。