それはある日の午後のことでした。キッチンのカウンターに、黒い小さな点がいくつか動いているのを見つけたのです。最初は気に留めなかったのですが、数時間後、その点は明らかに数を増し、砂糖の容器に向かって一列の行列をなしていました。「蟻だ!」その瞬間、私の長い戦いの火蓋が切って落とされたのです。まず試したのは、古典的な方法、濡れた布巾での拭き取りでした。しかし、拭いても拭いても、どこからともなく新たな蟻が現れます。埒が明かないと判断し、次にドラッグストアで蟻用の殺虫スプレーを購入。行列に向かって噴射すると、目の前の蟻は確かに退治できましたが、翌日にはまた別の場所に行列が。スプレーでは根本的な解決にならないことを悟りました。次に投入したのが、ベイト剤(毒餌)です。蟻の通り道にいくつか設置してみました。「これを巣に持ち帰ってくれれば…」と期待しましたが、数日経っても行列は一向に減る気配がありません。それどころか、ベイト剤を避けるように新しいルートを開拓しているようにも見えました。もしかして、このベイト剤はこの種類の蟻には効かないのか?と疑い始めました。途方に暮れかけた私は、インターネットで情報を集め、蟻の侵入経路を特定することが重要だと知りました。そこで、蟻の行列を根気強く目で追ってみることに。すると、驚いたことに、蟻はキッチンの窓枠のほんのわずかな隙間から侵入していることが判明したのです。外壁との間にできた、ミリ単位の隙間でした。すぐさまホームセンターで隙間を埋めるためのパテを購入し、その隙間を徹底的に塞ぎました。さらに、キッチン周りの徹底的な掃除、食品の完全な密閉保管も実行。すると、数日後、あれほどしつこかった蟻の行列が、嘘のようにピタリと消えたのです。侵入経路を断つこと、そして餌を与えない環境を作ること。この二つがいかに重要かを痛感しました。蟻との戦いは根気と観察力が必要でしたが、勝利した(と思いたい)時の安堵感は格別でした。もう二度とあの行列は見たくないものです。
我が家の蟻との長い戦い記録