我が家のキッチンに蟻が出没するようになって数週間。最初は数匹だったのが、気づけばシンク周りから戸棚へと続く、見事な黒い行列を作るようになっていた。スプレーで一時的に退治しても、ベイト剤を置いても、一向に収まる気配がない。これはもう、根本原因である侵入経路を突き止めるしかない!と決意した。休日の朝、私は探偵よろしく、蟻の行列の追跡調査を開始した。まずは、行列の終点である砂糖壺から、蟻がどちらの方向へ向かうのかをじっと観察する。一列になって、シンクの縁を通り、壁際を下降していく。ふむふむ。壁と床の境目を這い、冷蔵庫の裏へと消えていくようだ。冷蔵庫を動かすのは大変なので、まずはその手前の壁際を重点的に調査。壁紙のわずかな剥がれや、巾木の隙間などをライトで照らしてチェックするが、蟻が出入りしているような明確な穴は見当たらない。「一体どこから…?」焦りと苛立ちが募る。諦めかけたその時、ふと、キッチンカウンターの側面、床との接合部分に目が留まった。カウンターの化粧板がほんの少しだけ浮いており、そこに黒い点々が吸い込まれていくように見えた。「まさか、ここか!?」カウンターの下に潜り込み、内側からその隙間を確認すると、ビンゴ!壁の内部へと続く、細い隙間が空いていたのだ。おそらく、壁の内部を経由して、基礎部分かどこかの隙間から外へと繋がっているのだろう。こんな分かりにくい場所が侵入経路だったとは…。原因が特定できれば、あとは対策あるのみ。ホームセンターでシリコンコーキング材を購入し、カウンター側面と壁内部へと続く隙間を丁寧に埋めた。さらに、念のため、家の外周もチェックし、基礎部分に怪しい隙間がないか確認した。すると、数日後、あれだけしつこかった蟻の行列が、パタリと消えたのだ!侵入経路さえ断てば、家の中は彼らにとって魅力のない場所になるらしい。今回の追跡調査は骨が折れたが、原因を突き止めて解決できた時の達成感は大きかった。蟻駆除は、根気強い観察と、時に意外な場所への着眼点が重要だと学んだ一件だった。