ある年の5月、都内のマンションに住むB子さんは、自宅のベランダで異変に気づいた。コンクリートの手すりや床面に、無数の赤い小さな虫が這い回っていたのだ。体長は1ミリほどで、鮮やかな赤色。最初は数匹だったのが、数日後にはベランダ全体に広がっているように見えた。「気持ち悪い…何これ?」。B子さんは不快感を覚え、インターネットで調べた。すぐに「タカラダニ」というダニの一種であることが判明した。特に春から初夏にかけて、コンクリート面で大量発生することがあるという。人を刺したりはしないと書かれていたが、洗濯物についたり、潰してシミになったりする可能性があることを知り、対策を決意した。B子さんがまず試したのは、ホースで水を撒いて洗い流すことだった。勢いよく水をかけると、赤い虫たちは流されていき、一時的にベランダはきれいになった。しかし、翌日になると、またどこからともなく現れてくる。キリがないと感じたB子さんは、次に殺虫剤の使用を考えた。しかし、ベランダではハーブなどを育てており、薬剤の使用には抵抗があった。そこで、他の方法を探したところ、「壁面やコンクリートの清掃が予防になる」という情報を見つけた。タカラダニは壁面の花粉などを食べている可能性があるという。B子さんは、デッキブラシと中性洗剤を使って、ベランダの手すりや床、壁の一部を念入りにこすり洗いしてみた。特に、虫が多く見られた隅や溝の部分を重点的に掃除した。さらに、予防策として、タカラダニが嫌うとされるハッカ油を水で薄めたものをスプレーボトルに入れ、ベランダ全体に吹き付けてみた。これらの対策を数日間続けたところ、驚くことに、あれほど大量にいたタカラダニの数が目に見えて減っていったのだ。完全にゼロにはならなかったが、以前のようにベランダ全体を覆うような状況ではなくなり、不快感は大幅に軽減された。B子さんの事例は、タカラダニの大量発生に対して、殺虫剤に頼るだけでなく、発生源となりうる場所の清掃や、忌避効果のあるものの利用といった環境整備が有効であることを示している。タカラダニの発生時期は限られているため、その期間を乗り切るための対策として、これらの方法は試してみる価値があると言えるだろう。