黒くて細長い体型の飛ぶ虫を見かけると、すぐに「蜂だ!」と思ってしまいがちですが、実は蜂にそっくりな別の昆虫である可能性もあります。特に注意したいのが、ハナアブの仲間です。ハナアブはハエの仲間でありながら、捕食者である鳥などから身を守るために、蜂に姿を似せる「擬態」をしている種類が多く存在します。中には、黒くて細長い体型を持ち、一見するとアナバチやドロバチによく似ているものもいます。では、蜂とハナアブはどうやって見分ければよいのでしょうか。いくつかのポイントがあります。まず注目したいのは「翅(はね)」の枚数です。蜂の仲間は、前翅と後翅を合わせて翅が4枚あります(ただし、飛んでいるときは連結して2枚に見えることもあります)。一方、ハエの仲間であるハナアブは、翅が2枚しかありません。後翅は退化して「平均棍(へいきんこん)」という小さな器官になっています。止まっている虫をよく観察できれば、翅の枚数で区別できます。次に、「触角」の形状と長さもヒントになります。蜂の触角は比較的長く、「く」の字に曲がっていることが多いのに対し、ハナアブの触角は非常に短く、目立ちません。また、「目(複眼)」の大きさも異なります。ハナアブはハエの仲間らしく、顔の大部分を占めるほど大きな複眼を持っていることが多いですが、蜂の目はそれほど大きくありません。さらに、飛び方も異なります。蜂は比較的直線的に、羽音を立てて飛ぶことが多いですが、ハナアブはホバリング(空中停止)したり、急な方向転換をしたりと、よりトリッキーな飛び方をすることがあります。また、ハナアブは人を刺すことはありません。毒針を持っていないからです。これらの特徴を総合的に観察することで、見かけた黒くて細長い虫が蜂なのか、それとも蜂に擬態した別の虫なのかを判断する助けになります。見慣れない虫に遭遇したときは、すぐに怖がるのではなく、少し距離を置いて冷静に観察してみることで、意外な発見があるかもしれません。
黒く細長い蜂似ている虫の見分け方