オレンジと黒のツートンカラー、細長い体。この特徴を持つ虫を見ると、「やけど虫(アオバアリガタハネカクシ)かも!?」と警戒する方も多いでしょう。しかし、自然界には様々な昆虫が生息しており、中にはアオバアリガタハネカクシによく似た見た目をしているものの、全く異なる性質を持つ虫も存在します。誤って危険視したり、逆に安全だと思い込んで油断したりしないためにも、見分けるポイントを知っておくことは大切です。まず、本家本元のアオバアリガタハネカクシの特徴を再確認しましょう。体長は約7ミリメートル。頭部と腹部の後方が黒色、前胸部と腹部の大部分がオレンジ色(橙赤色)という、はっきりとしたツートンカラーです。翅(はね)はありますが、小さくて普段は隠れており、飛ぶこともできます。細長い体型で、一見するとアリにも似ています。このアオバアリガタハネカクシと間違えやすいのが、同じハネカクシ科の他の昆虫です。ハネカクシ科には非常に多くの種類が存在し、中にはアオバアリガタハネカクシと似たような色合いや体型を持つものもいます。しかし、その多くはペデリンのような強力な毒を持っていません。例えば、体色が全体的に黒っぽいものや、オレンジ色の部分が少ないものなどは、別種のハネカクシである可能性が高いです。正確な同定は専門家でないと難しい場合が多いですが、典型的なアオバアリガタハネカクシの配色(頭黒・胸オレンジ・腹前半オレンジ・腹後半黒)と完全に一致しない場合は、過度に恐れる必要はないかもしれません。また、アリ(特に翅を持つ羽アリ)と見間違える可能性もありますが、アリは胸部と腹部の間にくびれがあるのに対し、アオバアリガタハネカクシはずんどうな体型をしています。触角の形も異なります。重要なのは、見た目が似ているからといって、安易に「やけど虫だ」と断定したり、逆に「これは違うだろう」と油断して素手で触ったりしないことです。たとえ毒を持たない類似種であっても、不必要に触れることは避けるべきです。もし、体にとまった虫がアオバアリガタハネカクシかどうか確信が持てない場合は、念のため、直接手で払わずに、息で吹き飛ばすか、物を使ってそっと取り除くようにしましょう。「君子危うきに近寄らず」の精神で、疑わしい虫には触れない、潰さない、という基本的な注意を怠らないことが、最も確実な自己防衛策と言えます。