家屋内で発見される「白い小さい虫」は、多くの場合、特定の環境要因、特に高い湿度と密接に関連して発生する微小な節足動物です。これらの生物の生態を理解することは、効果的な防除戦略を立てる上で極めて重要となります。代表的な種類として、コナダニ類(Acari: Acaridida)とチャタテムシ類(Psocodea)が挙げられます。コナダニ類は、体長0.3~0.5mm程度のダニで、最適発育条件は温度25~28℃、相対湿度75%以上とされています。主にケナガコナダニやホウレンソウケナガコナダニなどが家屋内での発生種として知られ、小麦粉、砂糖、味噌、チーズ、菓子類などの貯蔵食品や、畳、わらなどを加害、繁殖します。これらの食品に含まれる糖質やタンパク質、そして高湿度環境下で発生する微細なカビを栄養源としています。コナダニの死骸やフンは、アレルギー性鼻炎や気管支喘息のアレルゲンとなることが知られており、衛生的観点からも対策が求められます。一方、チャタテムシ類は、体長1~2mm程度の昆虫で、翅を持つ種と持たない種が存在します。コナチャタテ科やコチャタテ科などが家屋内での主要な発生種です。彼らの至適環境もまた高温多湿(温度25~30℃、相対湿度70%以上)であり、主な食料源は、壁紙、書籍、段ボール、畳、食品などに生える微小なカビ(真菌類)や、有機物の破片、花粉などです。建材に含まれるデンプン質を摂食する種もいます。その食性から、チャタテムシの発生は、目に見えないレベルでのカビの存在を示唆しているとも言えます。これらの微小節足動物の発生を防除するための技術的アプローチとしては、まず第一に環境管理が挙げられます。相対湿度を60%以下に維持することが最も効果的な対策の一つであり、換気の励行、除湿器の使用、結露対策などが含まれます。次に、餌となる食品の適切な管理(密閉保存、冷蔵)や、カビの発生源となる箇所の清掃・消毒、ホコリや有機物屑の除去が重要です。化学的防除としては、ピレスロイド系などの殺虫剤が有効な場合がありますが、対象種や使用場所に応じた適切な薬剤選択と安全な使用が求められます。根本的な解決には、これらの生物の生態に基づいた総合的な環境改善が不可欠と言えるでしょう。