イエシバンムシやタバコシバンムシといったシバンムシ類の害虫としてのイメージは、「乾麺や小麦粉にわく虫」というものが一般的かもしれません。確かに、食品への混入は最もよく知られた被害ですが、実は彼らの食性は驚くほど広く、私たちの家庭内にある様々なものが被害に遭う可能性があるのです。食品以外で特に被害を受けやすいのが「畳」です。前述の通り、イエシバンムシは畳の内部の藁を食べて成長することができます。畳に小さな穴が開いたり、畳の上で成虫が多数見られたりする場合は、畳が発生源となっている可能性があります。放置すると畳が劣化し、耐久性が低下することにも繋がります。また、シバンムシは「書籍」、特に和紙などでできた古い本や掛け軸なども食害することがあります。本の表面に小さな穴が開いていたり、ページの間から虫の死骸やフンが出てきたりする場合は注意が必要です。図書館や博物館などでも、貴重な資料をシバンムシから守るための対策が講じられています。意外なところでは、「ドライフラワー」もシバンムシの被害に遭うことがあります。乾燥した植物質は、彼らにとって格好の餌となり得るのです。せっかく飾っているドライフラワーから虫が発生し、他の食品などに被害が広がってしまうケースもあります。「漢方薬」や「スパイス類」も油断できません。乾燥した植物性の生薬や香辛料は、シバンムシにとって魅力的な餌です。長期間保存しているものは、容器をしっかりと確認する必要があります。「ペットフード」も、ドッグフードやキャットフード、鳥の餌など、乾燥したものはシバンムシの発生源となりやすいです。大袋で購入して長期間保存している場合は特に注意が必要です。この他にも、シバンムシは動物性の乾燥標本(昆虫標本など)、革製品、毛織物、壁紙の糊(でんぷん質)、さらには化学繊維を食い破って内部の食品に到達しようとすることさえあります。このように、シバンムシの被害は、私たちが想像する以上に広範囲に及ぶ可能性があります。家の中でシバンムシを見かけた場合は、食品だけでなく、畳や書籍、その他の乾燥物など、様々な可能性を考慮に入れて発生源を探し、早期に対策を講じることが重要です。