黒くて細長い体を持つ蜂、特にアナバチ科やドロバチ科の仲間は、その巣の作り方や場所にもユニークな特徴があります。一般的な蜂の巣と聞いてイメージする六角形の集合体とは異なり、彼女たちは個性的で時に芸術的とも言える巣を、様々な場所に作り上げます。これらの蜂は基本的に単独で生活し、巣作りもメスが一匹で行います。巣は、幼虫を安全に育て、餌となる獲物を保管するための大切な場所です。アナバチの仲間、例えばジガバチなどは、その名の通り地面に穴(tunnel)を掘って巣を作ります。日当たりの良い、少し固まった土の地面などを好み、前脚で器用に土を掻き出して巣穴を完成させます。巣穴の深さや構造は種類によって異なりますが、掘り出した土で入り口を巧みにカモフラージュすることもあります。庭の片隅や畑、公園の砂地などで、地面に不自然な穴が開いていたり、小さな土の山ができていたりしたら、それはアナバチの巣かもしれません。一方、ドロバチの仲間は、泥を使って巣を作ることで知られています。トックリバチはその代表例で、泥を唾液でこねて、まるで陶芸家のように美しい徳利(とっくり)や壺のような形の巣を、壁や木の枝、軒下などに作り付けます。巣は通常、一つの幼虫室からなり、完成すると中に麻痺させた獲物と卵を入れ、入り口を泥で塞ぎます。他にも、壁の隙間や竹筒、植物の茎の中など、既存の空洞を利用して巣を作る種類もいます。例えば、ルリジガバチは竹筒や木の穴などを好み、その中に獲物を運び込んで泥で仕切りを作りながら複数の部屋を連ねていきます。これらの黒くて細長い蜂の巣を見つけた場合、どうすればよいでしょうか。多くの場合、巣は比較的小規模で、蜂自体も攻撃性が低いため、生活に直接支障がない場所であれば、そっとしておくのが良いでしょう。しかし、玄関や窓のすぐそばなど、頻繁に通る場所に作られて心配な場合は、専門の駆除業者に相談するのが安全です。巣の形状や場所から、そこにどんな蜂が住んでいるのかを想像してみるのも、自然観察の楽しみの一つかもしれません。