忘れもしない、それは引っ越してきて二年目の春のことでした。念願のマイホーム、特に気に入っていたのが無垢材を使ったフローリングと、リビングに備え付けられた木製の飾り棚でした。ある朝、いつものように掃除機をかけていると、その飾り棚の下に、見慣れない白い粉が落ちているのに気づきました。最初は子供がお菓子の粉でもこぼしたのかと思ったのですが、よく見るとそれは非常に細かな木くずでした。「あれ?」と思い、棚の裏側や下部を懐中電灯で照らしてみると、衝撃的な光景が目に飛び込んできました。棚板の裏側に、まるで針で刺したような小さな穴がいくつも開いており、そこからサラサラとした木くずがこぼれ落ちていたのです。そして、その木くずの中に、体長数ミリほどの、茶色く細長い小さな虫の死骸を数匹見つけました。これが、我が家とキクイムシとの長い戦いの始まりでした。すぐにインターネットで「木くず 小さな穴 虫」と検索し、それがキクイムシの被害である可能性が高いことを知りました。木材の内部で幼虫が育ち、成虫が出てくる時に木くずを出すのだとか。見た目以上に内部が食い荒らされているかもしれないと思うと、ゾッとしました。まずは自分でできることをしようと、ホームセンターでキクイムシ用の殺虫スプレーを購入し、穴という穴に注入しました。木くずもきれいに掃除し、これで一安心…と思ったのも束の間、数週間後にはまた別の場所から新たな木くずが。スプレーでは、木材内部の広範囲に潜む幼虫まで完全に駆除するのは難しいようでした。被害が飾り棚だけでなく、フローリングの一部にも及んでいることが判明し、これは素人では手に負えないと判断。結局、専門の害虫駆除業者に依頼することにしました。業者の方によると、キクイムシの種類はヒラタキクイムシで、建材自体に卵が付着していた可能性が高いとのこと。駆除作業は数回に及び、費用も決して安くはありませんでしたが、徹底的な駆除と再発防止策を講じてもらったおかげで、ようやく木くずの恐怖から解放されました。あの小さな木くずが、これほど厄介な問題のサインだったとは。早期発見と専門家への相談がいかに重要かを痛感した経験でした。