都心から少し離れた閑静な住宅街に住む佐藤さん(仮名)は、ある日、リビングのフローリングの隅に、見慣れない白い粉が溜まっているのを発見した。最初はホコリかと思ったが、掃除しても数日後には再び同じ場所に粉が現れる。よく観察すると、それは非常に細かい木くずのようで、近くのフローリング材には針で刺したような小さな穴がいくつか開いていた。インターネットで調べ、これがキクイムシの被害であると確信した佐藤さんは、DIYでの駆除を決意した。ホームセンターでキクイムシ用の殺虫スプレー(ノズル付き)を購入し、週末に作業を開始した。まず、木くずが出ている穴とその周辺の穴に、スプレーのノズルを差し込み、薬剤を丁寧に注入していった。説明書には「数回に分けて注入する」とあったため、時間を置いて何度か繰り返し注入した。作業中は換気を十分に行い、マスクと手袋も着用した。これで大丈夫だろうと、佐藤さんは胸をなでおろした。しかし、数週間後、期待は裏切られる。再び同じ場所から、そして少し離れた場所からも、新たな木くずがこぼれ落ちてきたのだ。佐藤さんは落胆したが、諦めきれず、今度は別の対策を試みることにした。インターネットで見つけた情報をもとに、注射器を購入し、より確実に薬剤を穴の奥まで注入しようと考えたのだ。さらに、木材用の補修パテで、薬剤を注入した後の穴を一つ一つ塞いでいく作業も行った。これは非常に根気のいる作業だった。しかし、これらの努力もむなしく、キクイムシの活動は収まらなかった。被害は徐々に広がり、フローリングの他の箇所や、近くに置いてあった木製の椅子にまで及んでいることが判明した。ここまで来て、佐藤さんはようやくDIYでの駆除の限界を悟った。「もっと早く専門家に頼めばよかった」と後悔しながら、害虫駆除業者に連絡を取った。業者の調査により、被害は床下の根太にまで及んでいる可能性が指摘され、大掛かりな駆除作業が必要となった。佐藤さんのケースは、キクイムシ被害の根深さと、素人判断での対処の難しさを示している。初期段階での専門家への相談がいかに重要であるかを物語る事例と言えるだろう。
ある家のキクイムシ木くず被害とDIY奮闘記