それは5月のよく晴れた日のことでした。庭の草むしりを終え、家の壁にもたれて一息ついていた時のことです。ふと、足元のコンクリート基礎部分に、鮮やかな赤い点が動いているのに気づきました。最初はゴミか何かかと思いましたが、よく見るとそれは小さな虫でした。体長は1ミリにも満たないくらいでしょうか。全身が真っ赤で、たくさんの脚(よく見ると8本ありました)をせわしなく動かして、コンクリートの上を歩き回っています。一匹だけではありません。視線を巡らせると、あちらこちらに同じ赤い虫がうごめいているのが見えました。特に、壁の隅やひび割れの周りに多く集まっているようです。「なんだ、この虫は…?」今まで見たことのない、その鮮烈な赤色と数に、正直少し気味が悪くなりました。クモのようにも見えますが、動き方はダニに近いような気もします。「赤蜘蛛」という言葉が頭に浮かびましたが、毒蜘蛛のような恐ろしさは感じられません。ただただ、小さい赤い点が、意味もなく動き回っているように見えました。気になってスマートフォンで「赤い 小さい 虫 コンクリート」と検索してみると、すぐに答えが見つかりました。「タカラダニ」という名前のダニの一種だそうです。春から初夏にかけて、コンクリート上などで大量発生することがあるとのこと。人を刺したりはしないけれど、潰すと赤い汁が出てシミになることがある、と書かれていました。なるほど、だから壁際などに多いのかと納得しました。花粉などを食べているという説もあるようです。正体が分かると、少しだけ安心しました。害はないと分かれば、あの赤い色も、なんだか太陽の光を浴びて輝いているように見えなくもありません。とはいえ、やはり大量にいると少し不快です。家の中に入ってこられるのも困ります。とりあえず、水を撒いて流してみることにしました。ホースで水をかけると、赤い虫たちはあっけなく流れていきました。根本的な解決にはならないかもしれませんが、一時的には数が減ったようです。あの赤い小さな訪問者たちは、初夏の訪れを告げる風物詩のようなものなのかもしれません。でも、できれば家の中には入ってこないでほしいな、と切に願うのでした。
庭で遭遇真っ赤な小さな虫の話