多くの人が、鳥の繁殖期と聞くと春の暖かい季節を思い浮かべるかもしれません。しかし、私たちにとって最も身近な鳥の一つであるドバトは、その常識が通用しない相手です。実は、鳩の産卵時期には明確なピークこそあれど、特定の季節に限定されているわけではなく、条件さえ整えばほぼ一年中繁殖が可能という驚くべき能力を持っています。なぜ彼らは、これほどまでに繁殖力が強いのでしょうか。その理由は、彼らの食性と、都市環境への驚異的な適応能力にあります。野生の鳥の多くは、繁殖期が餌となる昆虫や木の実が豊富な季節に限られます。しかし、都市部に住むドバトは、人間が落とした食べこぼしや、公園で与えられる餌など、年間を通して安定した食料源を確保することができます。これにより、繁殖に必要な栄養を常に得られるため、季節に関係なく産卵できるのです。特に、春(3月~5月頃)と秋(9月~11月頃)は、気候が穏やかで子育てに適しているため、産卵のピークを迎えますが、暖房の効いた建物や、天候の影響を受けにくい場所を見つければ、真冬であっても繁殖活動を行います。この「年中無休」とも言える繁殖サイクルこそが、都市部で鳩が増え続け、フン害や巣作りの被害が後を絶たない根本的な原因となっています。「春になったら気をつけよう」という意識では、もはや鳩対策は追いつきません。彼らの産卵時期は一年中であるという事実を正しく理解し、季節を問わず常に警戒を怠らないこと。それが、私たちの住まいを鳩の被害から守るための第一歩となるのです。