木材から排出される木くず(フラス)は、キクイムシの存在を示す重要なサインですが、その木くずの特徴からキクイムシの種類まで正確に特定することは、専門家でない限り非常に困難です。しかし、木くずの色や質感、そして被害を受けている木材の種類などから、ある程度の推測をすることは可能です。日本で家屋や家具に被害を与える代表的なキクイムシには、ヒラタキクイムシ類とナラヒラタキクイムシ、そしてシバンムシ科に属する種の一部などがいます。ヒラタキクイムシ類は、主にラワン材や竹材など、デンプン質を多く含む広葉樹材を好んで加害します。これらの木材から出るフラスは、非常に細かく、まるで小麦粉や片栗粉のようなサラサラとした感触であることが多いです。色は、食害している木材の色によって異なりますが、白っぽいものから淡黄色、淡褐色などが見られます。一方、ナラヒラタキクイムシは、その名の通りナラやケヤキ、タブノキなどの環孔材(導管が年輪に沿って環状に配列する木材)を好みます。こちらのフラスも微細な粉末状ですが、ヒラタキクイムシ類のフラスよりもやや粗く、色も褐色味が強い傾向があると言われています。また、ケブカシバンムシなどのシバンムシ科の甲虫も、古い木材を食害し、粉状のフラスを排出することがあります。シバンムシのフラスは、キクイムシ類のフラスと似ていますが、食害する木材の種類が広範(針葉樹、広葉樹問わず)である点が異なります。このように、木くずの特徴や被害材の種類から、ある程度の推測はできますが、確定的な同定には成虫の捕獲や専門家による診断が必要です。例えば、フラスの顕微鏡観察により、含まれる幼虫のフンの形状や木材片の大きさなどから、より詳細な情報が得られる場合もありますが、これは専門的な知識と機材を要します。一般的には、木くずを発見したら、種類を特定しようと悩むよりも、キクイムシの被害が発生しているという事実を認識し、速やかに専門家へ相談する方が、問題解決への近道となるでしょう。