家の中で、特に木製の家具や床、柱の近くに、まるで小麦粉をこぼしたかのような細かな木くずが落ちているのを見つけたら、それはキクイムシの仕業かもしれません。キクイムシとは、木材を食害する甲虫の総称であり、その名の通り、木材の内部を食い荒らす害虫です。では、なぜキクイムシがいると木くずが出てくるのでしょうか。その理由は、キクイムシの幼虫の生態にあります。キクイムシの成虫は、木材の表面や導管(木材内部の水分や養分が通る管)に産卵します。卵から孵った幼虫は、その木材の内部を栄養源として食べ進みながら成長します。幼虫が木材を食べ進む際に出るのが、食害による木くずと、幼虫自身のフンが混ざったものです。これが「木くず」の正体であり、専門的には「フラス」と呼ばれます。幼虫は木材内部で数ヶ月から数年かけて成長し、蛹になります。そして、成虫になると、木材の表面に直径1ミリメートルから2ミリメートル程度の小さな穴を開けて外に出てきます。この成虫が脱出する際に、内部に溜まっていた木くず(フラス)が、その穴からパラパラと外に押し出されるのです。そのため、木くずが落ちている場所の近くには、必ずと言っていいほど、キクイムシの成虫が脱出した小さな穴が見つかります。木くずの色や形状は、食害している木材の種類やキクイムシの種類によって多少異なりますが、一般的には非常に細かく、乾燥した粉末状であることが多いです。もし、家の中でこのような木くずを発見したら、それは木材内部でキクイムシの被害が進行している証拠と言えます。放置しておくと、被害が拡大し、家具や建材の強度低下につながる恐れもあるため、早期の発見と適切な対処が重要になります。