春から初夏にかけて、コンクリートの壁やベランダ、ブロック塀などで、鮮やかな赤い色をした小さな虫が活発に動き回っているのを見かけることがあります。その見た目から「赤蜘蛛」と呼ばれることもありますが、実はこれはクモの仲間ではありません。一般的に「赤蜘蛛」と認識されているこの虫の正体は、主に「タカラダニ」というダニの一種です。タカラダニは、カベアナタカラダニ科に属するダニの総称で、日本でよく見られるのはカベアナタカラダニなどです。体長は1ミリメートル程度と非常に小さく、全身が鮮やかな赤色をしているのが最大の特徴です。8本脚を持つためクモと混同されがちですが、体の構造はダニそのものです。彼らは主にコンクリートや岩の表面に付着している花粉や、微細な生物、昆虫の死骸などを食べていると考えられています。特に建物の壁面や基礎部分、ブロック塀、ベランダの手すりなどで大量発生することがあり、その赤い色が目立つため、人々に不快感を与えることがあります。また、洗濯物などについて家の中に侵入することもあります。もう一つ、「赤蜘蛛」という言葉で連想される可能性があるのが、植物に寄生する「ハダニ」の仲間です。ハダニもダニの一種で、非常に小さく、種類によっては赤みを帯びているものもいます。彼らは植物の葉裏などに寄生し、汁を吸って植物を弱らせるため、園芸においては重要な害虫とされています。しかし、ハダニは主に植物上で見られ、タカラダニのようにコンクリート上を活発に歩き回ることはありません。タカラダニは、人を積極的に刺したり咬んだりすることはなく、毒性もないとされています。しかし、潰すと赤い体液が出てシミになることがあるため、注意が必要です。また、稀にアレルギー反応を引き起こす可能性も指摘されています。このように、「赤蜘蛛」と呼ばれる虫の正体は、主にタカラダニであり、クモではありません。その生態を知ることで、過剰な恐怖心を抱くことなく、適切に対処することができるでしょう。
赤蜘蛛と呼ばれる虫の本当の姿