長年、人間と鳩の共存(あるいは対立)の歴史の中で、鳩対策の技術も進化を続けてきました。従来のネットや剣山、忌避剤といった方法に加え、近年ではより効果的で、建物の美観を損ねにくく、あるいは環境への負荷が少ない新しい技術も開発・導入されています。そのいくつかをご紹介しましょう。一つは、電気ショックシステムです。これは、鳩がとまりやすい手すりや庇、看板の上などに、特殊なレールやワイヤーを設置し、微弱な電流を流すシステムです。鳩がこれに触れると、静電気のような軽いショックを感じ、その場所が危険であると学習し、寄り付かなくなります。電流は微弱なため、鳩を傷つけることはなく、人や他の動物への安全性も考慮されています。設置には専門的な知識と技術が必要ですが、効果が高く、美観を損ねにくいのがメリットです。ワイヤーシステムも進化しています。従来のものより細く、目立ちにくいステンレス製のワイヤーを、特殊な支柱を使って鳩がとまりたい場所に張ることで、着地を物理的に妨害します。設置する高さや間隔を精密に調整することで、高い防鳥効果を発揮します。景観を重視する歴史的建造物や商業施設などで採用されるケースが増えています。レーザーを利用した忌避装置も登場しています。特定のパターンでレーザー光を照射し、鳩の視覚を刺激して警戒心を与え、そのエリアから追い払うというものです。広範囲をカバーできる製品もあり、倉庫や工場、農地などでの活用が期待されています。ただし、設置場所や照射角度、周囲の環境によっては効果が出にくい場合もあります。近年では、ドローン技術の活用も進んでいます。高所や広範囲の生息状況調査にドローンを用いることで、より正確な被害状況の把握が可能になり、効果的な対策プランの立案に役立てられています。また、ドローンを使って忌避剤を散布したり、特殊な音波を発して鳩を追い払ったりする試みも行われています。これらの新しい技術は、従来の対策方法と組み合わせることで、より高い効果を発揮することが期待されます。しかし、どんな技術も万能ではなく、設置場所の環境や鳩の執着度、コストなどを考慮し、専門家が最適な方法を選択することが重要です。鳩との知恵比べは、今後も技術の進化と共に続いていくことでしょう。