都内近郊の築30年を超えるアパートに一人で暮らすBさんは、その年の梅雨時期、奇妙な現象に悩まされていた。部屋の壁、特に北側の壁紙や、本棚に並べた書籍の隙間に、白い点のようなものが無数に現れたのだ。最初はホコリかと思っていたが、目を凝らすとそれらがゆっくりと動いていることに気づき、ぞっとした。大きさは1ミリにも満たない、本当に小さな虫だった。インターネットで調べると、「チャタテムシ」という虫の特徴と酷似していた。湿気が多く、カビやホコリを食べるという。Bさんの部屋は確かに日当たりが悪く、梅雨時期は特にジメジメしていた。壁にはうっすらとカビが生えている箇所もあり、古い本も多かった。Bさんは不快感と不安を覚え、まずは自分でできる対策を試みた。掃除機で虫を吸い取り、壁や本棚を拭き掃除し、換気を頻繁に行った。除湿剤もいくつか設置してみた。しかし、努力もむなしく、数日経つとまた同じように白い小さい虫が現れるのだった。その数は減るどころか、むしろ増えているようにも感じられた。虫がいると思うだけで気分が滅入り、部屋でくつろぐこともできなくなってしまった。特に、本の間から虫が出てくるのを見たときは、精神的にかなり参ってしまったという。自力での解決は難しいと判断したBさんは、意を決してアパートの管理会社に連絡した。状況を説明すると、管理会社はすぐに専門の害虫駆除業者を手配してくれた。業者による調査の結果、やはりチャタテムシが大量発生しており、原因は部屋の高い湿度と壁紙の裏などに発生したカビであると判明した。業者は薬剤による駆除作業と、防カビ処理を実施。Bさん自身も、業者からのアドバイスを受け、除湿器を購入し、換気を徹底するなど、生活習慣を見直すことにした。駆除作業から数週間後、あれほど悩まされていた白い小さい虫の姿はすっかり消え、Bさんはようやく安心して生活できるようになった。この経験を通して、Bさんは害虫発生の背景には環境要因が大きく関わっていること、そして問題が深刻化する前に専門家に相談することの重要性を痛感したのだった。