都心に建つ築15年のマンションに住む佐藤さん(仮名)一家は、ある時期からリビングで見かける小さな茶色い虫に悩まされていた。体長3ミリほどの丸っこい甲虫で、インターネットで調べると「シバンムシ」という害虫であることが分かった。最初は数匹程度だったのが、徐々にその数を増やし、キッチンや寝室でも見かけるようになった。特に、和室の畳の上で頻繁に見かけることから、発生源は畳ではないかと疑われた。佐藤さんはまず、市販の殺虫スプレーで応急処置を試みたが、効果は一時的で、すぐにまた虫が現れる。次に、畳用の注入式殺虫剤を使用してみた。畳の数カ所に針を刺して薬剤を注入したが、それでも虫の発生は収まらなかった。畳の内部深くまで薬剤が届いていないのか、あるいは発生源が他にあるのか、原因を特定できずにいた。痺れを切らした佐藤さんは、マンションの管理組合にも相談したが、「各住戸内の問題は基本的に自己責任で」との回答だった。途方に暮れた佐藤さんは、意を決して害虫駆除の専門業者に調査と駆除を依頼することにした。業者による詳細な調査の結果、やはり主な発生源は和室の畳であることが確認された。長年使用している畳の内部で、イエシバンムシが繁殖している状態だった。さらに、調査を進めると、キッチンの食品庫に保管されていた古い乾物(干し椎茸)からもシバンムシが発見された。畳と食品庫、二箇所が発生源となっていた可能性が高いと判断された。駆除作業は複数日にわたって行われた。まず、発生源となっていた乾物は廃棄処分。食品庫は徹底的に清掃・消毒された。次に、和室の畳に対しては、専門的な加熱乾燥処理が行われた。これは、畳を高温で処理することで、内部にいるシバンムシの幼虫や卵を死滅させる方法である。加熱乾燥処理後、念のため畳の下に防虫シートを敷き、畳を元に戻した。最後に、家全体に予防的な薬剤散布が行われた。駆除作業後、あれほど悩まされていたシバンムシの姿は完全に消え、佐藤さん一家はようやく安心して生活できるようになった。この事例は、シバンムシの発生源が複数存在する場合があること、そして畳内部のような素人では対処が難しい場所への対策には専門的な技術が必要であることを示している。自己判断での駆除が難しい場合は、早期に専門家へ相談することが、結果的に被害の拡大を防ぎ、確実な解決に繋がることを教えてくれる。
あるマンションのシバンムシ駆除顛末記