家の中で遭遇する蜘蛛の中でも、ひときわ大きな体で私たちを驚かせるのがアシダカグモです。脚を広げると十センチメートル以上にもなるその姿は、蜘蛛が苦手な人にとっては恐怖の対象かもしれません。しかし、このアシダカグモという種類の蜘蛛について詳しく知ると、その印象は大きく変わる可能性があります。アシダカグモは、日本全国の家屋内外に生息する徘徊性の蜘蛛で、特定の巣を作らずに獲物を求めて歩き回ります。その大きな体躯に見合った驚異的な捕食能力を持っており、主な餌となるのはなんとゴキブリです。大きな個体であれば、一晩で数匹、時には十匹以上のゴキブリを捕食するとも言われています。動きは非常に俊敏で、獲物を見つけると素早く襲いかかります。このため、アシダカグモが家に一匹いるだけで、ゴキブリの数が劇的に減少するという話も聞かれるほどです。まさに「自然のゴキブリハンター」と呼ぶにふさわしい存在なのです。見た目のインパクトから毒蜘蛛ではないかと心配される方もいますが、アシダカグモの毒は人間に対しては非常に弱く、基本的には無害です。性格も臆病で、人間を感知するとすぐに物陰に隠れようとします。積極的に人を襲ってくることはまずありません。もし咬まれたとしても、軽い痛みや腫れが生じる程度で、重篤な症状に至ることは稀です。もちろん、その大きさと素早い動きから、生理的な嫌悪感を抱く人が多いのは事実です。しかし、彼らが私たちの住環境において、衛生害虫であるゴキブリを駆除してくれるという大きなメリットを持っていることも忘れてはなりません。アシダカグモを見かけても、パニックにならず、まずはその益虫としての側面を思い出してみてください。殺虫剤で駆除する前に、そっと家の外に逃がしてあげるという選択肢も考えられるのではないでしょうか。巨大な家蜘蛛アシダカグモは、見た目に反して、私たちの静かな味方なのかもしれません。
アシダカグモ巨大な家蜘蛛の種類