お気に入りのセーターやスーツを取り出したら、覚えのない小さな穴が開いていた。そんな経験はありませんか。その犯人は、ヒメカツオブシムシの幼虫やイガといった衣類を食べる害虫かもしれません。彼らは一体どこから私たちの家、そしてクローゼットの中に侵入してくるのでしょうか。その侵入経路は一つではなく、私たちの日常生活の様々な場面に潜んでいます。最も一般的な経路として挙げられるのが、窓や玄関からの侵入です。特に春から初夏にかけて、成虫は産卵のために屋外を飛び回り、網戸の隙間やドアの開閉時といったわずかなチャンスを逃さず屋内に侵入します。彼らは非常に小さいため、人が気づかないうちに入り込んでいることがほとんどです。また、意外と見落としがちなのが、外に干した洗濯物への付着です。洗濯物を取り込む際に、成虫や卵が衣類にくっついて一緒に家の中に入ってきてしまうのです。これは衣類害虫にとって、産卵場所であるクローゼットへ直接アクセスできる最も効率的なルートの一つと言えるでしょう。その他にも、外出時に人の衣服やカバン、髪の毛などに付着して持ち込まれるケースや、購入した新しい衣類、特に中古品や輸入品の段ボールなどに潜んでいる場合もあります。彼らは暗くて湿気があり、餌となる繊維や皮脂汚れが豊富な場所を好むため、一度侵入を許すと、クローゼットやタンスの中で人知れず繁殖を繰り返します。この見えない侵入者の存在を意識し、その経路を理解することが、大切な衣類を守るための第一歩となるのです。